① 2040年、新設住宅着工数は「約25%減」になる
2025年1月、中国新聞に掲載された一本の記事に目が止まりました。見出しはエディオンのリフォーム事業拡大に関するものでしたが、その記事の中にこんな一文がありました。
「国内の新設住宅着工戸数が2040年度に24年度比で約25%減少すると予測する。一方、2040年のリフォーム市場規模は、2023年比で約1割拡大すると見通す。」
現在、新設住宅着工戸数は年間およそ80万戸と言われています。これが25%減少すると、約60万戸規模になります。
数字だけ見ると「まだ先の話」に思えるかもしれません。しかし、この数字が意味することをもう少し丁寧に読み解くと、今すぐ動かなければならない理由が見えてきます。
② 「仕事の奪い合い」より深刻な問題がある
着工数が25%減るというと、「競合が増えて仕事の奪い合いになる」と捉える方が多いかもしれません。しかし、問題の本質はそこではありません。
たとえば、年間10棟を建てている工務店があるとします。着工数が25%減れば、市場全体のパイが縮みます。同じ数の工務店が同じエリアに存在し続けることは、構造的に難しくなります。
「新築だけに依存した事業構造そのものが、成り立ちにくくなる」——これが、この数字が示している本当の意味です。
この見通しは、野村総合研究所も人口減少を主な要因として挙げており、単なる景気変動ではなく、構造的・不可逆的な変化であることが特徴です。すなわち、景気が回復しても元には戻りません。
③ 同時に進む「空き家問題」——3軒に1軒が空き家になる
新設住宅が減る一方で、もう一つの数字が重なります。
現在、国内の空き家はすでに900万戸を超えています。そして2038年には、「3軒に1軒が空き家になる」という予測が日本経済新聞でも報じられています。
この二つの数字を並べると、ひとつの構図が浮かび上がります。
- 新設住宅が減る → 「新しく建てる」市場が縮む
- 空き家が増える → 「既存の住宅をどう活かすか」という市場が広がる
つまり、「住宅の量」ではなく「住宅の扱い方」が問われる時代に入っているということです。
一方で、リフォーム市場は2040年に向けて約1割拡大するという見通しもあります。新築市場が縮む中で、リフォーム・リノベーション市場には明確な追い風が吹いています。
④ 工務店の「役割」を再定義する時代へ
この流れを踏まえたとき、工務店・リフォーム会社に求められる役割は変わってきます。
これまでの役割は、こうでした。
「お客様の要望を聞き、家を建て、必要に応じて修繕する」
これからは、こう変わっていくのではないでしょうか。
「家がどう住み継がれ、どう活かされていくかを設計する存在」
新築かリフォームかという二択ではなく、住宅ストック全体をどう維持し、どう次世代につないでいくか。そこに関われるかどうかが、工務店の将来を左右します。
具体的に言えば、こうした変化が求められます。
● リフォーム・リノベーションへの対応力を高める
新築だけでなく、既存住宅の性能向上・間取り変更・空き家活用まで対応できる会社になること。市場の拡大が見込まれるリフォーム領域に、今から人材・ノウハウを蓄積しておくことが重要です。
● OB客との長期的な関係設計
新規集客コストが高まる中で、既存顧客(OB客)との継続的な関係を維持することが、安定した受注の基盤になります。「工事が終わったら終わり」ではなく、住まいのかかりつけとしてつながり続ける設計が求められます。
● 「信頼で選ばれる会社」になる
市場が縮む中で生き残る会社は、価格の安さではなく信頼で選ばれる会社です。ブランドの構築、提案力の向上、成約の仕組み化——これらは今すぐ取り組むべき経営課題です。
⑤ 「15年後の話」ではなく、「今日から差がつく話」
2040年は確かに15年先です。しかし、15年後の結果は、今日の準備によって決まります。
会社の体制を変え、スタッフを育て、顧客との関係を築き、ブランドを育てるには、それ相応の時間がかかります。「そのときになってから動く」では、手遅れになる可能性が高い。
逆に言えば、今から動いている会社は、15年後に大きな優位性を持つことができます。
感覚や勢いではなく、数字と構造を踏まえたうえで、これからの建築事業を設計すること。その第一歩として、この数字を頭に入れておくことが重要だと考えています。
📋 まとめ
- 2040年に新設住宅着工数は約25%減(約60万戸)になると予測されている
- これは景気変動ではなく、人口減少による構造的・不可逆的な変化
- 空き家は2038年に「3軒に1軒」へ。リフォーム市場は逆に約1割拡大の見通し
- 工務店に求められる役割は「家を建てる」から「住宅の活かし方を設計する」へ
- 15年後の差は今日からの準備が決める。数字と構造を踏まえた経営設計が必要

この記事を書いた人
平原充明|株式会社エフツー 代表取締役
2010年創業。広島県を拠点にリフォーム会社・工務店専門のマーケティング支援を行う。リフォーム雑誌「HIROSHIMA REFORM」の発行、ポータルサイト・YouTube・インスタグラムの運営、自社イベント「ひろしまリフォームフェス」の開催など、自らメディアを運営しながらクライアントの集客・受注支援を行っている。年間300件以上の相談実績。