① 職人の採用が「構造的に難しくなっている」と実感した日
先日、建設業界の人材動向について専門的に分析・発信している方の講演を聞く機会がありました。
データに基づいた丁寧な分析で、業界の現状と今後の見通しが整理されており、非常に勉強になりました。中でも印象に残ったのは、職人の採用・育成に関する話です。
講演の内容を聞きながら、私自身がクライアントの工務店・リフォーム会社と日々やりとりする中で感じていたことと、ぴたりと重なる部分が多くありました。
「職人が採れない」「採れても定着しない」という声は、ここ数年で明らかに増えています。これは個々の会社の問題ではなく、業界全体の構造的な変化として捉えるべきだと、改めて感じた講演でした。
今回はその内容を踏まえながら、私自身の視点も加えて整理してみます。
② ハローワーク依存の採用が機能しなくなってきた理由
多くの工務店・リフォーム会社が今も採用の主軸に置いているのが、ハローワークです。しかし肌感覚として、以前ほど機能しなくなってきていると感じている方も多いのではないでしょうか。
背景にあるのは二つの変化です。
一つは、ハローワーク自体の変化です。正社員採用が減り非正規雇用が増えるにつれて、窓口担当者が企業に積極的に人材を紹介する動きが以前より弱まっています。求人票を出しても、昔ほどに候補者が紹介されてこない、という状況です。
もう一つは、求職者側の行動の変化です。20代・30代の若い職人は、スマートフォンで仕事を探しています。ハローワークの窓口に足を運ぶという行動自体が、若年層にとってはハードルになっています。
求職者の行動が変わっているのに、採用手段だけが変わっていない——この「ズレ」を放置している会社ほど、採用難に陥りやすくなっています。
③ 若い職人は、どうやって会社を探しているのか
講演の中で特に印象的だったのが、若い職人の「会社の探し方」についての話です。
20代・30代の職人が仕事を探すとき、その多くはIndeedやSNSなどオンラインで情報を集めます。気になる会社があればホームページを確認し、そこにLINEが設置されていれば登録して、そのまま応募してくる——という流れが増えているというのです。
電話や問い合わせフォームへの心理的ハードルが高い世代にとって、LINEは「気軽に連絡できる入口」として機能しています。この話を聞いて、確かにそうだと感じました。
ただし、ここには大切な前提があります。
LINEを設置しさえすれば応募が来るわけではない。「この会社で働きたい」と思わせるホームページがあって初めて、LINEが機能する。
会社の雰囲気・施工現場の様子・先輩スタッフの声——こうした情報がホームページで伝わらなければ、LINEがあっても意味がありません。採用のためのHP整備が、今の時代の採用活動の出発点です。
④ 「採れない」より深刻な「定着しない」問題
採用と同じくらい、いやそれ以上に深刻だと感じているのが「定着しない」問題です。せっかく採用できても数年で辞めてしまえば、会社にとっての損失は計り知れません。
若年層が早期に離職する理由として、講演でも指摘されていたのが育成スタイルのギャップです。
「見て覚えろ」「やりながら覚えろ」という職人文化は、経験を積む上では有効な面もあります。しかし今の20代には、それだけでは「この会社にいて成長できるのか」という不安を解消できません。
私がクライアントの会社を見ていて感じるのも同じです。若手が定着している会社には、共通して「成長の見通しを言葉で示せている」という特徴があります。
- 「入社1年目はこういう仕事を覚えてもらう」
- 「3年後にはこんな現場を任せられるようになる」
- 「うちにはこういう育て方がある」
こうしたメッセージを採用時から伝えられる会社は、若手から「ここで働き続けたい」と思ってもらいやすくなります。
⑤ 職人争奪戦を生き残るために、今すぐできる3つのこと
講演の内容と、私自身がクライアントとの関わりの中で感じていることを踏まえると、今すぐ取り組むべきことは大きく3つだと思います。
● 1. 採用向けのHP・情報発信を整える
会社の雰囲気・働く環境・施工現場の様子・先輩の声——これらが伝わるページを整備することが先決です。採用専用のページを一枚追加するだけでも、応募者の反応は変わります。求職者は会社を「見て」判断しています。
● 2. 若手が使う媒体に求人を出し、LINEを設置する
IndeedなどのオンラインプラットフォームにHPと連動した求人を出すこと、そしてHPにLINEを設置して気軽に問い合わせできる導線をつくること。ハローワーク一辺倒から抜け出す最初の一歩です。
● 3. 育成の方針を言語化して発信する
「うちはこう育てる」というメッセージを言葉にして、求人ページやHPで発信できるかどうかが差になります。言語化する過程で、社内の育成の仕組み自体も整理されていきます。採用と育成は、切り離せない問題です。
📋 まとめ
- 職人採用の難化は個社の問題ではなく、業界全体の構造的変化
- ハローワーク依存の採用は機能しにくくなっている。若手はオンラインで会社を探している
- LINEは有効だが「問い合わせしたくなるHP」があって初めて機能する
- 定着率を上げるには「成長の見通しを言葉で示せる」組織になることが重要
- 採用・HP整備・育成の言語化——この3つを同時に動かすことが職人争奪戦を生き残る鍵

この記事を書いた人
平原充明|株式会社エフツー 代表取締役
2010年創業。広島県を拠点にリフォーム会社・工務店専門のマーケティング支援を行う。リフォーム雑誌「HIROSHIMA REFORM」の発行、ポータルサイト・YouTube・インスタグラムの運営、自社イベント「ひろしまリフォームフェス」の開催など、自らメディアを運営しながらクライアントの集客・受注支援を行っている。年間300件以上の相談実績。